藤井 聡
東日本大震災やリーマンショックによる経済危機を経験した今、わたしたちの社会に最も求められているものは、巨大自然災害や世界的経済金融危機などの様々な「危機」に対する「レジリエンス」(resilience、強靱さ)を如何にして確保するのか、という一点です。この「レジリエンス」とは、弾力性ある「しなやかさ」を言うものです。すなわち、様々な外力が加わっても、致命傷を受けることなく、被害を最小化し、迅速な回復を果たす、その社会の力こそが、レジリエンスとなります。
そして今、新型コロナウイルスの感染拡大に対して私達に求められているのも、やはりこの「レジリエンス」なのです。すなわち、いわゆるコロナ禍と呼ばれるものの被害を最小化し、その被害を迅速に回復させるためにも、バランスの取れた「適切な経済活動の維持」や「行動自粛を含む感染防止対策」を、政府の十分な補助・支援の下、行っていくことが求められているのです。
本ユニットでは、こうした認識の下、ウイルス学研究の第一人者である宮沢孝幸博士(プロフィールは下記を参照)を准教授としてお迎えし、共同で研究・議論を重ねながら、行動自粛や感染防止対策について、啓発・啓蒙を行うことで屋内商業施設の利用者や事業者が安全かつ安心できる環境を構築していきたいと考えています。
京都大学大学院工学研究科教授/表現者クライテリオン編集長
1968年奈良県生まれ。工学博士。京都大学卒業後、同大学助教授、東京工業大学教授等を歴任し、京都大学大学院工学研究科(都市社会工学専攻)教授、京都大学レジリエンス研究ユニット長。第二次安倍政権では内閣官房参与(防災・減災ニューディール政策担当)も務める。専門は、都市・国土計画、経済政策等の公共政策論および実践的人文社会科学研究。
宮沢 孝幸
感染症とはウイルスや細菌などの病原体が人々の身体の中に侵入し、増殖していくことで広がっていく病気のことをいいます。コロナウイルスというのは昔からある風邪(症候群)を引き起こすウイルスであり、そのウイルスの新型が新型コロナウイルスという次第です。ウイルス(病原体)が体内に侵入したからといって、必ずしも「発症」するとは限りません。新型コロナウイルスへの感染は、一定量以上の個体がまとまって侵入しなければ感染(=増殖&発症)を引き起こしません。また、常に免疫力を高めておくことも非常に重要です。よって、適切な感染防止対策を講じることができていれば、日常生活のみならず、旅行などの余暇を楽しむことも可能となります。現在巷に溢れている感染症対策には、効果の薄いものや過剰となっているものが散見されますし、そういったことが私たちの行動や多くの企業活動の妨げとなっており、悪循環を生み出しているのではないかと思います。
必要なのは、このウイルスに対してひとりひとりが「正しく理解する」「正しく恐れる」ことであり、こういったことが社会全体の利益に繋がっていくものだと考えます。
1964年東京都生まれ。京都大学レジリエンス実践ユニットウイルス学担当 准教授。附属感染症モデル研究センターウイルス共進化研究分野主宰。ウイルスと宿生の共進化を主に研究。内在性レトロウイルス学専門。